呪いの絵

 私の小学校には呪いの絵があった。

 

 私が小学校三年生のとき、初めて呪いの絵を見た。その絵は鍵のかかった資料室にあった。ある日先生の手伝いで資料室に入ると、おそらくその絵であろうものを見つけた。恐る恐るキャンバスの側面から絵を覗くと、何か赤い絵が描いてあった。私は恐ろしくなり、それ以上その絵を見ないように作業をした。

 小学校六年生のとき、再び資料室に入る機会があった。もう呪いの絵のことも忘れていたし、呪いも信じていなかった。しかし、資料室に入るとすぐにその絵のことを思い出した。昔見たあの絵はなんだったのだろう。私は今度はその絵を正面から見てみた。

 それは赤い絵であった。背景は真っ赤な嵐にすすきが揺れている。そして赤い着物を着た少女が振り返っていた。だがそれは普通の少女ではなかった。顔がすべて目玉なのだ。顔の代わりに大きな目玉が描かれていた。

 この異様な絵が一体なぜこの学校に置かれているのだろうか。先生に尋ねると、「昔、この学校に通っていた児童が交通事故で亡くなった。その親御さんがこの絵を描き寄贈したのだ。」と。

 私は何かやるせない気持ちになった。親御さんはどのような心境でこの絵を描いたのだろうか。この絵を表立って飾ることも、ましてや捨てることも出来ない学校も、呪いの絵と噂されるこの絵自身も。